JR西日本は、合同説明会を受けて遺族らとの個別の補償交渉を本格化させる。説明会で「精神的、経済的な負担に対するケアに誠心誠意、取り組む」との方針を示したが、補償金額などには言及しなかった。過去の航空機事故や鉄道事故では交渉が長期化するケースが多く、遺族らから懸念する声が出ている。
 遺族に対する補償には、亡くなった人が将来得られたはずの「逸失利益」や、慰謝料、葬儀費用などが含まれ、その内容や算定方法は交通事故と基本的に変わらないとみられる。
 520人が犠牲になった日航機墜落事故(85年)では、全遺族が日航と補償交渉を終えるまで10年を費やした。91年には米ボーイング社と一部遺族が、墜落までの32分間の“恐怖の慰謝料”を加味して交通事故の基準を超える額で和解した。
 42人が亡くなった信楽高原鉄道(SKR)事故(91年)では、犠牲者9人の遺族が93年、JR西とSKRに損害賠償を求めて提訴したが、計5億1000万円の支払いを命じる判決が確定したのは、事故発生から11年半後。両社が遺族や負傷者らに支払ったのは総額約32億円に上った。
 日本リスクマネジメント学会会長で、大事故などでの補償問題に詳しい亀井利明・関西大名誉教授(危機管理論)は「今回の犠牲者は安全を信じ切って電車に乗っており、JR西も100%悪いと認めている。前例にこだわらず、遺族の心の傷や慰謝料について、手厚い補償がされてもいいのでは」と指摘している。【坂口裕彦】
(毎日新聞) - 6月18日19時35分更新