兵庫県尼崎市の福知山線脱線事故で、JR西日本が、負傷者のほか、負傷しなかった乗客や遺族についても、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を補償対象とする方向で検討を始めたことが11日、わかった。

 早期交渉を望む遺族もいることから、同社は週明けにも個別の話し合いに入る。

 同社には、けがのなかった乗客からも「夜、眠れない」などの相談が寄せられ、PTSDと診断されれば、同社は事故との因果関係を確認したうえで、治療費などを支払う意向という。

 また、遺族の中には「涙が止まらない」といった症状を訴える人も少なくない。同社は、事故が与えた心理的影響の大きさを考慮し、遺族、負傷者に対する18日の事故説明会までに、PTSDを含む補償のあり方を決める方針で、「不安を取り除けるよう、手を尽くしたい」としている。

 PTSD問題に詳しい松本誠弁護士(大阪弁護士会)は「加害企業が裁判によらずPTSDを補償するのは聞いたことがない。診断書など補償に必要な基準を早い時期に伝えることで、被害者が安心して医療機関に行ける環境を整えるべきだ」と指摘している。
(読売新聞) - 6月12日12時23分更新