JR西日本が03年12月のダイヤ改正で、脱線事故のあった福知山線の快速電車の停車駅を増やした際、鉄道事業法で義務づけられた運転曲線図を付けずに、運行計画変更届出書を近畿運輸局に提出、受理されていたことが分かった。停車駅増で宝塚―川西池田間は各駅停車になり、同社は「普通電車の曲線図で代替できる」と説明したが、過去の曲線図は保存期限が過ぎて廃棄され、制限速度内で運転しているかどうかの確認は不可能だった。運輸局は「曲線図がないまま受理したことは検討課題」とチェックの甘さを認め、「駅間時間の資料を見せてもらい、全くチェックできなかったわけではない」と釈明している。
 北側一雄国土交通相は5月の参院決算委員会で、事故を起こした快速のダイヤについて「運輸局で当然チェックし、制限速度内で運行可能と判断している」と答弁していた。今後、ダイヤ変更時などでの精査の仕方が問われそうだ。
 JR西日本は届出書を03年11月20日に提出。宝塚―川西池田間の中山寺駅(宝塚市)に快速を新たに停車させるため、鉄道事業法施行規則に基づき、ダイヤ(列車運行図表)と、ダイヤ作成の基本となる運転曲線図を添付する必要があった。しかし、同社は97年のダイヤ改正時につくった普通電車の曲線図で代替できるとして改正後の快速の曲線図は出さなかった。
 これについて、近畿運輸局は「1つの曲線図でわかりやすく示してもらうのがベターだった」と説明。国交省関係者は「一般的には曲線図がなければ、ダイヤ通りに運行可能かどうか検証さえできない」と指摘している。
 快速は停車駅が増えた一方で、宝塚―尼崎間の所要時間はほぼ変わらず、恒常的に遅れが発生。事故を起こした快速は、オーバーランなどによる遅れを取り戻そうと急カーブを高速で進入したとみられ、余裕のないダイヤが事故の背景として指摘されている。国交省は全国の鉄道事業者に、ダイヤ編成にゆとりがあるかどうかの総点検を指示している。【本多健、田中謙吉】
 ▽JR西日本広報室の話 快速の停車駅に中山寺駅を追加し、宝塚―川西池田間の停車駅は普通電車と同じになった。この区間の普通電車の運転曲線図は既に提出しており、同じ内容の資料提出は必要ない。
 【ことば】運転曲線図 距離に対する速度と時間の関係をグラフ化し、列車の走行状態を示したもの。距離と走行時間を横軸、速度などを縦軸にして、車両の性能や線路の状態で運転曲線(ランカーブ)の曲がり具合が決まる。駅出発時の加速や停車時の減速、事故現場(70キロ)のようなカーブや最高速度(福知山線は120キロ)などの速度制限も読み取ることができる。
(毎日新聞) - 6月3日3時6分更新