兵庫県尼崎市のJR脱線事故の後、JR西日本神戸支社管内の列車区が現場社員に、脱線事故にかかわる社内事情などを外部に公言しないよう求める区長名の文書を配り、署名・捺印(なついん)を求めていたことが十六日、関係者の話で分かった。神戸支社では事故発生後にゴルフや懇親会をしていたことが発覚しているが、文書は自粛すべき言動を例示して、社会的な批判を避けるのが狙いとみられる。現場からは「事故や会社について自由な発言ができないのは問題だ」との声が出ている。 
 関係者によると、文書は神戸支社管内の列車区長名で「会社の現状を把握し、責任ある行動を」との表題で、十三日付で同区内の現場乗務員に配布された。
 脱線事故をめぐっては、事故発生時に大阪支社管内の天王寺車掌区の社員らが大阪市内で開かれたボウリング大会に参加するなど、事故後の「不適切な事象」が相次いで発覚し、世論の批判を集めている。
 配布された文書は「社員が公の場で娯楽に興じることは内容にかかわらず社会の理解は得られない」と強調。「いかなる指摘も受けることのないよう自らが留意してください」と注意を喚起している。
 そのうえで、自粛すべき言動の例を具体的に例示。会社の内外を問わず、事故のことや、事故に関連した会社のことを公言しないよう求めている。
 さらに、集団でのスポーツなどのレクリエーション活動や、懇親会、親睦(しんぼく)会など社員同士での宴席、ゴルフ、旅行-などの自粛を要請。個人や家族との旅行などプライベートの行動も自粛すべきだとし、内容を理解のうえ、署名・捺印して提出するよう求めている。
 一部の社員は署名・捺印を拒んでいるが、すでに提出済みの社員も多くいるという。
 ある関係者は「『不適切な事象』が相次いだのは、ある意味で会社の体質。社会からの批判を避けるため、個々の社員に署名・捺印を強要するのはおかしい」と批判。「上から社員を抑えつけようとしている」と反発している。
(産経新聞) - 5月17日3時30分更新